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ゲートキーパーのクオリティは、アナリストの調査能力にほかならないが、いかに大勢のアナリストを抱えていようともヘッジファンド業界全体をカバーすることは不可能なことから、テューデイリジェンスのための訪問先を事前に選定することになる。 その際、一定の条件を満たすヘッジファンドマネージャーをデータベースから抽出するプロセスを経るが、単にリターンのよいマネージャーから順にスクリーニングするという方法ではなく、先にあげた、「過去のリターンは将来のリターンを予想するうえでの材料にはならないが、過去のリスク管理技術の巧拙は、将来のリスクに対するマネージャーの対応能力を示しうる」という考えに基づき、ヘッジファンドのリスク指標であるダウンサイドディピエーション等によるスクリーニングを行う。
こうしたスクリーニングプロセスにおいて、ヘッジファンド業界のわずかを包含するデータベースが必要で、裾野の広さはもちろんのことデータの鮮度や正確さが求められることになる。 データベース整備に関するゲートキーパーの考え方はさまざまで、自社でデータベースを構築する会社のほか、インターネット等で公開されている他社データをそのまま活用している会社もあるようだ。
リアルタイムで時価を公表しているヘッジファンドは少なく、まずは速報値が報告され、その後確定値に塗り変えられることが一般的な業務フローであることから、公開されているデータベースが正しい時価を反映していないケースもあり、それに基づきマネージャーセレクションが行われるとなると選定されたファンドはクオリティという点で不安が残る。 したがって、ゲートキーパーのなかには、データベースのクオリティを維持するためにデータメンテにかかわる専門職員や、膨大なデータを処理するシステム保守のためにインフォメーションテクノロジー担当の専門職員を配置している会社もある。
訪問先が選定されると、アナリストによるデューディリジェンスを実施するが、アナリストの陣容とクオリティはゲートキーパーの生命線で、各社が最も注力している分野である。 ヘッジファンドマネージャーの9割は米国を拠点にしていることから、ゲートキーパーも米国を中心にアナリストを配置しているが、近年、ヨーロッパやアジア地域を拠点とするヘッジファンドが創設されるようになってきた動きを受けて各社とも体制整備を急いでいる。
デューディリジェンスはヘッジファンドマネージャーの定性評価が中心となるが、リターンが再現可能なモデルを使ったクオンツタイプの投資戦略の場合は、ヘッジファンドのクオンツモデルを再現し、モデルのリターンと実際のリターンを比較することによって分析を行うといった計量分析も重要で、そうした分析を専門に行うアナリストを配置する必要がある。 さらに、ポートフォリオのリスク分析や、ヘッジファンドと取引を執行するプライムブローカー、投資家に基準価格等を報告するアドミニストレーターの3者間に潜むオベレーショナルリスクの分析も重要で、そうした分析を専門に行うアナリストを配置しておくことが望ましい。
デューディリジェンスのポイントについて解説するが、大きく分けて、組織運用優位性の三つがチェックポイントで、それに加えて、オベレーショナルリスクを考慮することになる。 組織についての第一のチェックポイントは、運用担当者の能力の見極めで、過去どの運用経験があり、ヘッジファンドの運用スキルをどこで習千尋したかということである。
第二のチェックポイントは、運用組織に関するもので、運用者が株主として、しっかり運用会社の経営にコミットしているかどうかという点である。 調査セクションは運用会社のプロフィットセンターとして、パックオフィスはポジション把握やファンド評価といったインフラ面において、将来のビジネス拡大とのベクトルが合っているかどうかをチェックする。

第三のチェックポイントは、運用成績が良好なために運用適正額を超えて運用資産額が増加するリスクで、期待収益率の低下による投資対象の変更といったファンドのクオリティ劣化やスタイルドリフトの原因になる。 運用資産が順調に積み上がることで、ヘッジファンド事業が成功し、パフォーマンスフィーを追求せずともマネジメントフィーで十分な収益を獲得でき、ファンドマネージャーとしてのモチベーションが低下するといったケースもある(2-47)。
運用資産額の増加は、必ずしもヘッジファンドの運用効率の低下につながるものではないが、債券アービトラージ、マーケットニュートラルや買収合併裁定取引といった、小さなスプレッド(価格差)を大きなレバレッジで取りにいく裁定取引では、運用資産額の増加が運用効率の低下につながる可能性が高いし、ロングバイアス、グローバルマクロといった投資戦略は運用資産額の増減による影響は限定的である。 逆に、ディストレストセキュリティーズは運用資産額の増加が運用効率の向上につながるという結果になっている。
これを運用年数と運用効率という関係でみてみると、多くの戦略にとって、運用年数の経過は運用技術の普遍化や運用資産額の増加による運用効率の低下を招くようで、つまり、運用資産額がどの時間軸のなかで増加しているかという点がポイントになる。 最後のチェックポイントは、運用者に報酬面でのインセンティブが付与されているかということである。
大手運用機関や投資銀行におけるヘッジファンドセクションの運用担当者の退社独立志向が強い理由の一つに報酬問題があげられているが、ヘッジファンドにおいても運用担当者が株主ではなく十分な報酬を享受できていない場合は転職(退社)リスクがあり要注意である。 なお、そうした運用担当者が退社した場合は、その時点で、ヘッジフアンドの過去の実績はトラックレコードとしての意味を失うことになる。
組織については、運用担当者の能力、運用組織、運用資産額、インセンティブの四つがポイントとしてあげられる。 まず、第一のチェックポイントは、投資戦略の収益性である。
投資哲学や投資方針のチェックに加え、ヘッジファンドマネージャーの収益源泉を明らかにする。 当該戦略が市場環境にフィットしているのか、そうでないかを分析することによって、足元のリターンを把握する。
第二のポイントは、投資戦略のリスクがどこにあるかを明らかにすることである。 たとえば、レラティブバリューは、ポジションをニュートラルとしたうえで有価証券聞の価格差の拡大縮小を収益源泉とする戦略であるが、スプレッドの縮小に対してレバレッジ比率を引き上げていないか、ポジション(特に、資金を支出している買持ちポジション)の流動性に懸念はないか、企業業績の悪化を受けてスプレッドがねらっている方向とは逆に拡大していないかといった点がチェックポイントとなる。
個別銘柄のロングショートを収益源泉とするセキュリティセレクションの場合は、個別銘柄選択が効力を失う市場環境、つまり、企業収益に基づく成長性や割安度といった観点で株価が形成されない需給相場といった環境下にないかどうかがチェックポイントとなる。 第三のポイントは、ポジション構築のプロセスである。


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